第参話 逃亡者
「おはよう。特に怪我もないようだな。」
「…こ、ここは?あなた…誰?」
昨夜の事をかいつまんで話すと、ジャックはカーテンを開けた。
看板娘クリスティナが都合をつけてくれた、酒場2階の貸宿。
窓から眺める、まばゆい朝の光に包まれたリスボンの町並み。
「リスボンの酒場だ。で、名前は?ボクはジャック。」
「…シータよ。」
ジャックは白いお皿に乗った、食パンと目玉焼きをシータに手渡した。
「君はどこから来た?…シータ。」
お腹が空いていたのか、ガツガツと目玉焼きの乗ったパンを
ほおばりながらシータは言った。
「…覚えてないわ。気がついたらここだった。」
首をすくめて笑いながらジャックは答える。
「記憶を無くしたってことかい?w」
「そうみたいね。」
いけ好かない女だ…。
かなりの美人だが、お高く留まっていて他人事のように言いやがる。
トルトゥーガでこんな女が居たら、男たちの物笑いにされらぁ。
こっそりと悪態をつきながらも、シータの食べ終えたお皿を
流しに戻しに歩いたその時。
ダーン!バリン!バンバン!ガシャーン!
窓に大きく穴を開けながら、銃弾が飛び込んできた。
とっさにジャックは伏せろと叫びながらシータの上に覆いかぶさる。
しばらくして銃撃の音がやみ、微かにガラスがパラパラ言う音だけが響いた。
「君にはトラブルが付き物らしいな。
じゃあ、そういうことで。ボクはトラブルはごめんだよ。」
ジャックは酒場の2階からパイレーツコートを羽織ながら降りる。
「ちょっと、あの銃声はなんだい!弁償してもらうよ。」
クリスティナが険しい顔をしてジャックに詰め寄る。
「悪かった、この女のせいでな。ほら。」
と、金貨を2枚ほどクリスティナに渡すジャック。
「”女”じゃないわ、シータよ!」
「はいはい、そうですかシータさん。ボクはもう船が出港するんだ。」
港では陽気にギブスがもやいを解く準備をしていた。
「よう!ジャック。よく寝れたか?w」
ジャックがそれに答えようとしたとき、後ろから声がした。
「待ってよ!私も連れて行って。」
ジャックが呆れた表情で振り返ると、シータが真剣な表情で見つめる。
「へい、ジャック。女は船に乗せると縁起が悪いって言うぜ…」
ギブスが心配そうに覗き込む。
シータは引下がらず、ジャックを真っ直ぐ見つめ、熱心に説得を試みる。
「なぜ追われてるのかも、彼らが何者なのかも分からないわ。
でもこのままここに居たって、彼らのいい餌食よ。
あなたがたが行くのは南の方角、ペンダントが指したのも南。
これもきっと何かの縁じゃない?そうでしょ?ジャック。」
ジャックは軽く天を仰いで、またシータを見つめ、軽く船を指差した。
シータの顔がぱっと明るくなる。
「ばれたら船長にどやされる…」
ギブスの嘆きもむなしく、船はしばらくしてラスパルマスを目指して出航した。
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2007.04.07 | | Comments(2) | 航海日誌 ■






